相続税申告累計800件事務所はどうやって生まれたのか?
2015/09/14
「目標設定」と「SWOT分析」が躍進のカギ
開業からわずか6年で累計約800件の相続税申告受任実績を誇る税理士法人チェスター。なぜ、ここまで躍進できたのか。その要因として「目標設定」と「SWOT分析」が挙げられる。
今回は、4月22日に行われた「会計事務所のビジネスフェア」での講演「税理士法人チェスターの経営戦略」から、同税理士法人の「目標設定」と「SWOT分析」を紹介する。
全国平均100倍超の驚異的な相続税申告実績
平成24年の相続税課税対象被相続人の数は52,572人(国税庁「統計年報」より)。一方、同年の会計事務所の数は31,222件(総務省「平成24年経済センサス」より)。単純に計算すると、一会計事務所が年間で扱う相続税申告件数は平均すると1.68件になる。
一方、税理士法人チェスターの平成24年度の相続税申告受任実績は173件。単純計算で平均の100倍以上。翌25年度は228件にも達する。いかに驚異的な実績かが読み取れる。
開業当初から相続専門会計事務所として躍進を遂げた税理士法人チェスター。これまで若手税理士による相続専門会計事務所の例がなかったことから、どのようにしてスタートアップを切ったのか、注目を集めた。
そのベースとなるのが目標設定。開業当初は「相続税で困っている人の役に立つ事務所を作る」「相続税で日本一の事務所を目指す」という理念・目標を掲げた税理士法人チェスター。
「まずは100件。次は200件」という具合に目標のハードルを高め、実績を積むことに注力した。中期的にはこれから3年以内に年間1,000件の相続税申告を目標としている。
「機会」が「強み」を伸ばし「弱み」をカバー
躍進のカギを握ったもう一つの要因はSWOT分析。周知の通り、組織や個人の「S(=Strength・強み)」「W(=Weakness・弱み)」「O(=Opportunity・機会)」「T(=Threat・脅威)」を要因分析し、経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法の一つ。税理士法人チェスターは、自社の「SWOT」を以下のように分析した。
S(=Strength・強み)
●相続税専門
●低価格な税理士報酬
●税務調査率3%
●年間200件以上の申告実績
●マスメディアからの取材が多数
●相続関連書籍の出版実績有
W(=Weakness・弱み)
●法人顧問先が少ない
●創業から浅い
●スタッフの平均年齢が若い
O(=Opportunity・機会)
●高齢化による市場の拡大
●相続税の税制改正
●年間約5万件の相続税申告
●相続に関する関心の高まり
T(=Threat・脅威)」
●日本全国で「相続税専門」の会計事務所は、数社しかない
特に税理士法人チェスターの場合「O(機会)」が大きく後押しした。それにより「S(強み)」を伸ばし、「W(弱み)」をカバーできたといえるだろう。
相続特化に限らず、会計事務所が特定分野に強みを発揮して業績を伸ばすには、それぞれの「SWOT」を洗い出して分析することが欠かせない。税理士法人チェスターは、綿密な分析を行った好例ともいえる。