「税務調査対応で月1000万円」秘訣は「尖がる戦略」にあった!
2015/09/07
税務調査対応に特化し、ハイシーズン時には一人で月1000万円稼ぐという渡邊勝也税理士。集客はすべてWebによる。専用サイト「税務調査110番」を設け、月に平均20件前後の問い合わせを受け、約5割の確率で顧問契約に結び付けている。なぜ、渡邊氏は税務調査対応に特化したのか。理由は徹底した「尖がる戦略」にあった。
渡邊氏の税務調査対応の集客はすべてWeb。専用サイト「税務調査110番」を核とし、ブログやツイッター、フェイスブック等、複数の媒体を駆使して、月に平均20件前後の問い合わせを受け、約5割の確率で成約へと結び付けている。
「ニーズとウォンツがともに高く、マーケティングしやすい」。渡邊氏は税務調査対応サービスをこう分析する。実際、「税務署から連絡が来た後」という非常事態での業務依頼が圧倒的に多く、通常の顧問契約と比べてあまりステップを踏まずに契約できる。そして、短期間で信頼を築けるという特徴がある。
税務調査対応の報酬は前金でもらうようにしているので、売掛金の滞留とは無縁。事務所のキャッシュフロー円滑化にも貢献する。
「税務調査対応は苦しいときに安心感を与えられるので、料金を値切られるようなことはありません。『3日後に払ってください』と言っても、しっかり振り込んでくださいます。それだけ期待されているのです」
税務調査では「白」と「黒」と「グレーゾーン」を明確に分けることに注力
「税務署と徹底的に闘う」というスタンスではなく、納税者と税務署の双方が納得し、できるだけ早く調査を切り上げられるよう努めている。「税務署と税理士が怒鳴り合うだけでは、お客様は料金を払う気にはなれないし、報酬アップにはつながりません」
集客の要となる専用Webサイト「税務調査110番」は、冒頭にアメリカンコミック風の漫画を掲載している。税務調査で窮地に追い込まれた経営者を、渡邊氏扮するヒーローが助けるという単純明快なストーリー。「この人だったら、助けてくれそう」というイメージをビジュアルで訴求している。
渡邊氏が税務調査対応に特化したきっかけは、大手税理士法人のパートナー時代にさかのぼる。数多くの税務調査に立ち会い、国税や税務署とのやり取りで、ロジカルに法律論を組み立てることを学び、それを得意としていった。 税務調査が終わって問題が解決すると、どのクライアントも心の底から安心し、喜んでくれた。渡邊氏はそれを見て「税務調査対応こそが税理士に求められる仕事。ここで頑張れば輝ける」と思い、2010年の独立開業後、業務特化を決めた。
専用サイト「税務調査110番」を軸に月20件前後の問い合わせを獲得
一方、渡邊氏は税務調査対応に特化するにあたって大きな覚悟と決心を要したという。独立前には独自の連結納税システム開発を企画したり、生命保険を活用した節税に強みを発揮したりと、セールスポイントがいくつもあったからだ。渡邊氏は、どれを「売り」として「尖がる」か、迷いに迷った。結局、「お客様から喜ばれるものほど、濃密なサービスが提供できる」と、税務調査対応への特化を決断。「今では覚悟を決めてよかったと思っています」とほほ笑む。
「当事務所のような小規模会計事務所は、何かに特化して尖がらないと、お客様から選ばれません。例えば、みそラーメンが食べたい人は『ラーメン、うどん、そば、天ぷらなど何でも置いているお店』と『みそラーメン専門店』のどちらを選ぶでしょう? もちろん、みそラーメン専門店ではないでしょうか。会計事務所も同じこと。所長税理士のブランディングが必要なのです」
事務所名に「TAX GYM」と冠しているように、全日本ベンチプレス大会3位の実績があり、「肉体派税理士」の異名を持つ渡邊氏。事務所職員は基本的に体育会出身を採用し、自分と価値観が合うメンバーを集めている。
「採用面接で腹筋をさせる会計事務所は、うちだけでしょう(笑)。その分、求人には苦労しますね。しかし、10人前後の会計事務所ならば、価値観が合うことは重要です。だからチーム(事務所)としても尖ることができるのです」
渡邊氏は職員数を50人、100人と増やしていくよりも、同じ考えと価値観を持つ勤務税理士にのれん分けして、10人単位の「TAX GYM」をいくつも作りたいと考えている。その理由は、同じ価値観で良好なコミュニケーションを取れる組織は10人が上限であることと、税理士の独立開業を支援することができるからである。
「経営者と強い絆で日本一STRONG(強くて健全)な会社を増やす」を企業理念に掲げるTAX GYM 渡邊勝也会計事務所。理念実現に向けた「尖がり」で、幾多の壁を突破しようと挑戦は続く。
[事務所DATA]
TAX GYM 渡邊勝也会計事務所(東京都渋谷区)
所長:渡邊勝也氏(税理士・税務訴訟補佐人)
開業:2010年
職員数:8人
顧問先数:約100件
※数字はいずれも2011年12月現在