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人財獲得競争にあなたの事務所は勝ち残れるか?

      2015/09/08

事務所に合った給与・報酬システムが生み出す成長の力

人材には3つある。その優秀な能力で事務所を成長させる「人財」。邪魔こそしないもののただそこにいるだけの「人在」。そして、周りに悪影響を与え利益を食いつぶす「人罪」だ。優秀な人財を採用するために、最低限必要なふたつの要素がある。それが「給与・報酬システム」と「教育制度」だ。もはや、このふたつなしでは事務所を成長させられない時代がすぐそこまでやってきたのだ。

成長できる事務所には成長できる給与システムがある?

価格競争が激しさを増し、月額顧問料4,000円代を売りにする事務所までもが登場した2012年。この熾烈を極めた価格競争は近々終りを迎え、その後、優秀な人財を巡っての人材獲得競争の時代がやってくる。この人材獲得競争に勝ち残った事務所だけが成長できる、そんな時代が訪れるのだ。「給料規程と教育制度のない事務所には生徒を送り出せません」そう答えたのは、某資格専門学校のスタッフだ。給与・報酬規程と教育制度のない、徒弟制度を今なお残しているような旧世代型の事務所は退職率が格段に高い。職員の成長もなく、自身の仕事への満足感も得られないというのがその理由だった。

違った側面から人材獲得について見てみよう。

今年、税理士業界ニュース編集部では税理士向けに「会計業界に対する意識調査」として、人材にまつわるアンケート調査を行った。その結果、人材にまつわる課題として、50人以上の大規模事務所では「評価・報酬」が、5人未満から50人未満の事務所では「採用・教育」が挙げられていることが分かった。

裏を返せば、50人以上の職員を抱える大所帯に成長できるような事務所は、人材の大切さ、給与・報酬規定の大切さを熟知しているといえるだろう。事務所の特徴や目指している方向性に合った「評価・報酬制度」を持つ事務所が大きく成長できるのだ。

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優秀な人材は優秀な事務所に分かれる人材獲得の明暗

「人材採用は相変わらずの買い手市場です。ただし、優秀な志望者に関しては採用が集中する、超売り手市場となっています」(某資格専門学校スタッフ)。

事務所の売上は誰が作るのか。それは「人財」が作り出す。その売上を、ただ存在するだけの「人在」と、周りに悪影響を与える「人罪」が食いつぶしていく。事務所の売上を伸ばすためには「人財」を増やしていくしかない。

しかしその人財には、多くの事務所から引く手あまたの声が掛かる。顧客の奪い合いにとどまらず、ライバルたちとは優秀な職員の奪い合いもしなければならない時代なのだ。そんなとき、給与規程もない、職員の教育制度もない、福利厚生もなくすべては所長のご機嫌にかかっている、そのような事務所に「人財」は入社してくれるだろうか。

売上を作れる人財を入社させられず、人罪ばかりになってしまった事務所の行く末はどのようなものか、誰にでも想像できるのではなかろうか。

事務所の方向性に合致した給与・報酬規程を職員と共有

現在の税理士受験生たちのうち「将来独立したい」と答えたのはわずか17%という統計がある(税理士業界ニュース調べ)。多くの就職希望者たちは、ひとつの事務所にできるだけ長く勤めて経験を積み、社会の役に立ちたいと願っている。

働く事務所を選ぶにあたって、給与や報酬、評価についての考え方が事務所と職員とで合致しているか否かは大きなポイントだ。

自分が将来、どのようなキャリアパスを描くのか、安心して働くための一番基本的な部分をあやふやにしてはいけない。所長先生の目指す事務所の方向性にあった給与・報酬規程を定め、職員と共有することで、職員は安心して働くことができるのだ。

事務所のカルチャーを共有する給与規程で職員がひとつに

「当社ではより良い事務所にするために貢献してくれる人、事務所を引っ張りあげてくれる人を高く評価します。このような当社のカルチャーを理解して、一緒に成長したいと思ってくれる人を採用します」と語るのは、辻・本郷税理士法人の徳田孝司理事長だ。

一体何をすれば評価され、どう頑張れば認めてもらえるのか、これはその組織の目指すゴールによって変わる。ただし、そのゴールを明確に定義し、職員と共有することで意味をなし、給与・報酬は事務所のエンジンとして機能する。「所長の鉛筆ナメナメ」でなんとなく評価されてしまっては、職員は何をどう頑張れば良いのかわからなくなってしまう。

所長は何に価値を置いているのかを職員と共有しなければ、事務所のゴールは明確にならず、職員は所長以下ひとつに団結できなくなっ(1面の続き)人財獲得競争にあなたの事務所は勝ち残れるか?~事務所に合った給与・報酬システムが生み出す成長の力~てしまう。

給与・報酬制度はただ職員に対する給料について規定するだけのものではない。事務所の未来をつくる、職員と一緒に明日をつくりあげるための第一歩なのだ。

自発的に働ける環境づくりで職員の定着率は上がる

自発的に動いて行う仕事と言われてイヤイヤする仕事、どちらがやりがいかあるかは聞くまでもないだろう。

職員自らが、「一体自分は今何をするべきか」を自発的に考えて能動的に行動できる事務所は、新規の売上も伸びる、お客様の満足度も上がる、やりがいを感じる職員はいきいきと働くというように、正のスパイラルが回り出す。「うちは職員の定着率が高いんです。仕組みがシンプルだから一人ひとりが“自分の給与を上げるためになにをすればいいのか”を考えて自発的に動いているんです」と語るのは、税理士法人トップ会計事務所の増山雅久代表社員だ。

社員が自立し、自身の役割を把握して行動できる組織がどれほど強いかは想像に難くない。その根底には成果配分という考えに則って制定された給与・報酬規程がある。

功序列でなんとなく給与を上げていくのではなく、「やったらやっただけやった分を払う」システムならば、職員は前向きに自分の仕事を遂行しようとする。

ポジティブに自分の意志で働く職員はマインドも高く、上からの命令でただ動く「やらされている感」もない。 自分の評価が何に基づいているのか、なぜこの評価なのかといった指標が明確なため、不満も出にくく、職員の定着率も高くなる。人財が長く定着し、事務所を成長させていくモデルケースといえるだろう。

コミュニケーションが不満を招く報酬規程で定着率アップ

顧問先と綿密なコミュニケーションを結ぶには、優秀な職員の採用と育成が大切になる。1年ごとに職員が入れ替わってしまうようでは、顧問先から信頼を得るのは難しい。

顧問税理士に満足していますか? の質問に、「満足」「大変満足」との答えが合わせて56%となった(税理士業界ニュース調べ)。半数以上の経営者が満足している一方で、44%は満足していない。では顧問先が税理士に対して抱く不満はなんだろう。

その答えは「コミュニケーション不足」の一言に集約できる。サービスに対する不満も値段に対する不満も、しっかりと根拠と理由を説明できれば大きな不満に成長したりはしないものだ。

また、昨今では経営コンサルティング的な指導も必要になる。そのためには顧問先をよく知る職員を定着させる必要がある。

優秀な職員を採用し育成するためには何が必要なのか、その答えは事務所の方針に適した給与・報酬システムにある。事務所のスタイルやビジョンと合致し、職員のやりがいを喚起するようなシステムになっているのかどうか、ぜひ一度、見なおしてみてはいかがだろうか。

『新・会計事務所の給与・報酬システム』

 - 事務所経営