「なぜ、お客様から信頼を得られないのか?」を考えよう
2015/09/08
「なぜ顧問契約を解除されるのか?」「なぜ『顧問料を値下げしてほしい』と言われるのか?」「なぜ高付加価値業務を提案できないのか?」。それは、顧客対応力がないからです。顧客対応力は、実践をサポートするためのコミュニケーションの基本スキルを体得することで向上します。つまり、コーチングスキルを習得することが不可欠。
今回はコーチングに強みを発揮する吉川直子社会保険労務士が、コーチングスキル向上の大前提にあたる「なぜ、税理士はお客様から信頼を得られないのか?」について解説します。
コーチングスキル習得の大前提
税理士の先生が顧客対応力、コーチングスキルを向上するにあたっては、まず「なぜ、お客様から信頼を得られないのか?」を押さえておく必要があります。
なぜ、お客様から信頼を得られないのか? 右上の別項に並べてありますが、これらは実際に私が弊社のお客様からいただいた声だったり、税理士や社会保険労務士などの士業仲間とお話をしたなかで出てきている課題からピックアップしています。一つひとつ見ていただいて、ご自身に該当することがあるかもしれませんが、押さえていただければと思います。
「話す」よりも「聞く」ほうがより重要
では、別項のなかの課題をいくつかピックアップしてみます。
●専門用語ばかりで言っていることが難しい
これはよく言われていることですね。みなさんこういう認識をお持ちで、非常にわかりやすい言葉で説明することを心掛けている方が増えてきています。
ただ、それでもまだ「専門用語が多い」というお客様の声をいただいております。「こんなにかみくだいた言葉で説明して大丈夫かな?」というくらい、わかりやすい言葉で説明をすることが大事なポイントになってきます。
●「説明」することばかりに気を取られ、一方的に話してしまう
●自分の説明したいことを話し、お客様の意向を聞こうとしない
こちらから話すことはできても、お客様の話は聞かないという声は非常に多いようです。私も実際に「うちの税理士さん、なかなか話を聞いてくれないんだよね」と言われたことがあります。
もちろん、説明や話をすることは必要不可欠です。しかし、それだけではなく、お客様がどのようなことを望んでいるのか、どういう要求を持っているのか、現状把握のためにもきちんと話を聞くことが重要なのです。
お客様から信頼を得るには「聞く」ということを、今後は意識していただく必要があるでしょう。
きちんとコミュニケーションを取ればニーズを把握できる
実際に私も弊社のお客様から「税理士の先生を替えたいので、紹介いただけませんか」と相談されることがあります。
事例を一つ紹介します。二代目の社長さんが、先代社長からお付き合いしている税理士に対して不満があるというお話でした。
この税理士の先生は、先代社長に対しては非常にマナーが良く、きっちりと対応していました。しかし、二代目社長になった途端にマナーが悪くなったそうです。
打ち合わせの最中に「ちょっとすみません」の一言もなく携帯電話に出て話し出したり、重要な資料を郵送するときに、ホチキスで留めて封がきちんとされない状態で送ったりと、きちんと対応してくれず、社長さんは困ってしまい「税理士を替えたい」と相談してきました。
つまり、お客様ときちんとコミュニケーションを取れていれば、お客様が何を望んでいるのかというニーズの把握ができるのです。まずはお客様の話をしっかり「聞く」ことが、信頼関係の構築につながるのではと考えています。
吉川直子氏
株式会社シエーナ代表取締役。社会保険労務士事務所シエーナ代表社会保険労務士。法政大学法学部法律学科卒業。卒業後就職したアパレルメーカーの会社倒産を機に、某大手労働保険事務組合に転職。その後4ヵ所の社会保険労務士事務所にて9年間勤務し、1~1000人までのあらゆる規模の日本企業、外資系企業の人事労務管理の実務経験を積み独立。現在、労務管理、就業規則等の社内ルール作り、社員研修、経営者の方向けのコーチングなど、企業の「人材」についてトータルにサポート。商工会議所をはじめとした各種団体からの講師実績多数。雑誌やウェブでの執筆も精力的にこなす。著書に『税理士が知っておきたい人事労務の基礎知識』(清文社)がある。