「全員で営業」「全員が経営者視点」で1人2500万円稼ぐ事務所へと成長
2015/09/04
「職員1人当たりの売上が2500万円」。こんな超高収益会計事務所が名古屋にある。それは税理士法人コスモス。
高収益の秘訣は徹底した成果給制度と従業員教育にある。そして、年間120 ~130件の新規拡大も実現。「全員で営業」「全員が経営者視点」をどのようにして浸透させているのか。代表社員税理士の鈴木成美氏に話を聞いた。
税理士法人コスモスの挑戦
「『全職員が経営者のパートナーになる』という考え方が、当事務所の取り組みのベースになっています」と鈴木氏は語る。
「経営者のパートナー」とは、経営者に情報提供や提案を行い、問題を解決して感動を与える存在を指す。所長だけではなく職員全員が経営者と対等の意識を持って経営支援にあたることで、顧問先企業と会計事務所がともに成長していくと、税理士法人コスモスでは考えている。
職員を「経営者のパートナー」にするにはどうすればいいのか。鈴木氏は「仕事をどんどん振ることと、成果給制度を導入することです」ときっぱりと語る。鈴木氏自身がコスモスグループ代表の野田賢次郎公認会計士・税理士から同様に指導を受けたからである。
「『とにかく実践で学べ』と、ハードルの高い仕事をどんどん振られ、背中を押していただきました。また、仕事を与えられて成果を出した分は給料として報いてくれました」(鈴木氏)
経営者と従業員の視点の大きな違いは、新しい仕事を受けたときに表れる。経営者ならば新しい仕事に感謝し、喜ぶものだ。一方、従業員は「仕事が増えた」と不満が募ることが多い。この点を踏まえ、税理士法人コスモスでは成果給制度を徹底。導入が決まったのは、2003年の税理士法人化のとき。代表社員に抜擢された鈴木氏が仕組みを作り上げた。
仕組みと配分制度が明確な成果給制度を徹底
税理士法人コスモスの成果配分は以下の通り明確だ。
[税務顧問料]
●事務所→20 ~40%
●開拓者(年金)→20%
●担当者とチェック者→40 ~60%
仕事の質に応じて、取り分に2割の幅をつけている。職員は担当数を増やせば増やすほど報酬を上げられる仕組みになっている。
ここで特筆すべき点は開拓者に支払われる「年金」。顧問先が契約を解除しない限り継続して支給される。年金だけで年間百万円単位支給されている職員も少なくないという。
[コンサルティング料]
●事務所→50%
●その案件に携わった職員→50%
コンサルティングの中身は事業承継、株価対策、組織再編等が中心。料金は職員の裁量で決めている。職員には一時金(ボーナス)の形で支給。報酬の半分をもらえることが大きな動機付けになっている。
コンサルティングを提案して受注すればするほど、職員は報酬が増え、事務所の利益率も上がるシステムになっている。近年は事務所の売上に占めるコンサルティング料の比率が高まり、3割前後に達している。
以前から「頑張った人には報酬を」というスタンスだったので、成果給導入について、職員の抵抗はほとんどなかった。ただ、それまで年功序列的に給料が上がっていた当時の30歳代後半層は「頑張らないと給料が上がらない」と、いい意味でプレッシャーになった模様。しかし、成果給導入で退職した職員はいないという。
多くの仕事を担当すれば、その分が自身の給料に反映されるので、新規拡大にも力が入る。各自ノルマが与えられ、達成できないときはペナルティーが課せられる。
「うちはとにかく『お客様のところへ行け』と、4時間以上の内勤を禁止しています。1日2社としても月40 ~50社訪問できます。しかし、実際はグループ会社もあるので、会っている社長の数は20 ~30人でしょう。すると10日は余ります。余った時間を新規開拓に当てるよう徹底しています」(鈴木氏)
今後の挑戦として、鈴木氏はこれまでの高収益化ノウハウを、全国の会計事務所に広めたいと考えている。
2008年に税理士法人コスモスは福岡の会計事務所と経営統合した。成果給制度をはじめ同様のシステムを導入し、たった3年で職員1人当たりの売上が750万円から1500万円と倍増。しかも、増員せず従来からのメンバーで達成した結果である。
これらの自社での実績を踏まえ、鈴木氏は今後、全国の会計事務所に自身の考え、ノウハウを伝えたいと意欲を見せる。まさに業界全体、ひいては中小企業全体の底上げを見据えた大きなチャレンジでもある。
鈴木成美代表社員 税理士
税理士法人コスモス(愛知県名古屋市、福岡県福岡市、東京都台東区)
税理士業界ニュース 第12号(2011年7月号)より