顧問先を逃がさない決算書・試算表の「説明の仕方」とは
2015/09/07
一般的に中小企業の社長さんは決算書や試算表を読むことが苦手です。では、どんなことを感じてるのかご存知ですか?
「決算書、試算表は大事なもの。できれば内容を理解したいけど、会計事務所の説明を聴いてもさっぱりわからない」。
これが現実です。実は「決算書、試算表をわかりやすく説明してほしい社長」よりも「わかりやすく説明することが大事だと思っている会計事務所」のほうが少ないのではないでしょうか。今回は平井満広税理士が、中小企業の社長が会計事務所の決算書・試算表の説明に対して不満を持つポイントについて解説します。
中小企業の社長は会計事務所の説明のどこに不満を持つ?
長引く不況と震災で、多くの中小企業が売上減や売掛金回収の困難化を余儀なくされました。今やどんな企業でも資金を必要としています。
ご存じの通り、現在、銀行が融資を審査する際、決算書の中身を重視します。つまり、決算書の内容について、社長が自分の言葉で説明できることが求められるようになったのです。
それにはまず、顧問税理士が顧問先社長に決算書の内容についてわかりやすく説明することが不可欠。資金調達においては、顧問税理士の存在感が以前よりも高まったといえるでしょう。
しかし、中小企業の社長は決算書や試算表について、こう感じています。
「決算書や試算表は大事なもの。できれば内容を理解したいけど、会計事務所の説明を聴いてもさっぱりわからない」
これが現実ではないでしょうか。ではなぜ、社長さんはこのように思うのでしょう。
それは、社長さんに何をわかってもらえばいいのか、会計事務所がわかっていないからです。実は「決算書、試算表をわかりやすく説明してほしい社長」よりも「決算書、試算表をわかりやすく説明することが大事だと思っている会計事務所」のほうが少ないようにも感じられます。
疑問に答えた説明をしないから不満になる
では、中小企業の社長さんは、決算書と試算表のどんな点に疑問を持っているのでしょうか。
1.そもそも何が書いてあるの?
2.どんな意味があるの?
3.結局、どうすればいいの?
この3点です。
しかし、この点を考慮して決算書と試算表を説明している会計事務所はまだまだ少数派です。すると、社長さんが感じる上記3点の疑問は次のように不満へと変化します。
●決算書や試算表には、そもそも何が書いてあるのかわからない
●決算書や試算表には、どんな意味があるのかわからない
●決算書や試算表の内容から、結局どうすればいいのかわからない
よって、会計事務所はそれぞれの疑問に答えられるように決算書と試算表の説明をすれば、顧問先の社長さんから喜ばれるのです。
では、決算書と試算表に「何が書いてあるのか」「何を意味するのか」「何をすればよいのか」を踏まえた説明のポイントについて、一部を紹介します。
「何が書いてあるのか」
・まずは概要から入る
・専門用語を使わずわかりやすい表現で
「何を意味するのか」
・売上増=利益増=資金増ではないことを教える
・粗利率の重要性を説く
「何をすればよいのか」
・売上→単価×数量、原価率→原価/売価というように身近な数字に置き換える
・「来期はどうしていくのか」という視点で話す
これらの点を踏まえて決算書や試算表を説明すると、社長さんの満足度は相当向上します。
平井満広税理士
日本大学文理学部心理学科卒。株式会社中央競馬ピーアール・センターで株主総会事務、取締役会事務等を担当。落合会計事務所、KCCSマネジメントコンサルティングを経て、平井会計事務所を開業。「会計を通じて人を幸せにする」を事業理念に掲げ、管理会計の導入、経営会議の参加、事業計画書の作成等のサービスで、中小企業の経営を支援している。雑誌、新聞等の取材、執筆も多数。
税理士業界ニュース 第12号(2011年7月号)より