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税理士に知られていない印紙税の知識を今こそ身につけるべき

      2015/09/08

最近は三井住友銀行、ダイエー、ワコールなど、有名企業を中心に印紙税に関する多額の追徴課税を受けるケースが目立っています。一方、印紙税の税務調査は「枚数が多くて確認が不可能」「証拠がなければ反論が難しい」ということから推計課税が許されています。そうなると中小企業でも多大な金額の追徴課税を受ける恐れがあります。ここで税理士に求められるのは、印紙税に対する正しい知識。

今回は松嶋洋税理士が最近の印紙税調査の事情についてお話しします。

多額の追徴課税事例が続出

最近、印紙税に関して多額の追徴課税事例が頻出していますが、これにはいろいろな事情があります。まず不景気であること。税務調査は法人税が中心ですが、ご存知の通り赤字の会社が多いので、なかなか税金が取れません。しかし、印紙税は文書を作れば課税され、赤字や不景気とは無関係。なので、当局は印紙税調査の比重を高めていると考えられます。

最近は三井住友銀行で、3年間で1億5,000万円の追徴課税というショッキングな事例がありました。ATMの受取書で70万枚分の印紙を貼っていなかったのです。

この事例で押さえていただきたいのは「大企業でも印紙に関するケアレスミスは起こりうる」ということです。どうして印紙に関するミスが起こるのか。売上の領収書は印紙を貼るのが常識となっています。一方、それ以外に関しては抜けているケースが多いです。しかし、売上以外の受取書も課税対象となります。印紙税はレアな税金のため、基本的な誤解が大きいのです。

もうひとつは、ダイエーの課税漏れの事例です。3年間で3,300万円の追徴課税がありました。自転車の修理伝票に印紙を貼っていなかったという問題です。

印紙税における契約書と通常の契約書との間には隔たりがあります。「契約書」という名前ではなくても、実質的に契約書にと判断される書類にも印紙税がかかるのです。このため「『契約書』じゃないからいいか」と、書類のタイトルに惑わされると痛い目に遭うわけです。

税理士顧問契約書にも課税されるケースがある

中小企業にとっても印紙税調査は怖いものです。中小企業の社長は印紙について「とりあえず200円分貼っておけばいい」という程度の認識しかないことがほとんどです。私がある企業で目にした事例をお話しすると、実際に代理店契約書を見せていただいたとき、200円の印紙を貼っていました。しかし、実際は4,000円分の印紙が必要で、3,800円の課税が漏れていたのです。契約書は全部で200枚程度。合計で3,800円×200枚×1.1(過怠税)=83.6万円の課税漏れになります。この金額は中小企業にとってダメージが大きいでしょう。

では、税理士顧問契約書はどうなるのか。原則として印紙の対象外なのですが、課税されることもあるというのが統一的見解です。

もし、顧問契約書が課税対象と判断された場合、どれくらいの追徴課税がかかるのか。顧問先が200件の場合、200円×200件×1.1(過怠税)=4.4万円になります。そして、これが5年分(時効)だと22万円です。

この場合は金額のダメージというよりクライアントの信頼に影を落とします。「うちの税理士は印紙税のことを知らない」と思われたら、信頼関係にヒビが入ります。

印紙税に関してよく知らないという税理士は多いです。しかし、これからは最低限の知識を身につけておく必要があるでしょう。

『印紙税の調査対策と留意点』

松嶋 洋税理士
税務総合調査コンサルタント・税理士。2002年東京大学卒業。03年国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)入庫。04年東京国税局入局。管内税務署において、法人税等の税務調査・審理事務に従事。07年企業税制研究所(現日本税制研究所)入所。主任研究員として、各種セミナー講師及び出版業務並びに法人税制の研究に従事。09年都内大手税理士法人入社。節税実績1億5千万円の相続対策や、4,000万円超の追徴を未然に防止する税務調査対策に従事。11年松嶋洋税理士事務所を開業。税務調査対策を入口とした、総合的なコンサルティング業務を実施している。著作は『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の理論と実務』(共著)。

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